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 ◆『ぱたぱたジミー』 2011年4月20日 作者インタビュー

・・・インタビュアー ( X )     ・・・作者 ( まつはらともふみ )


新作『ぱたぱたジミー』誕生という事で、まずは製作のきっかけ等をお聞かせください。
 初めにこの作品を描こうと思ったのは、『ポメ。』を描いてた頃でしたかね?
何年前になりますか・・・?7年前・・・?
詳しい事は覚えてないですけど、もうずいぶん前から、セキセイインコ「ジミー」の話は描きたい
と思ってました。
 
「ジミー」というのは、まつはらさんが以前飼われてたインコの名前だとか?
すると、『ポメ。』と同じ様に、かつての愛鳥を描いた物語という事になるのですか?
 そうですね。そうなります。
好きだった自分の子供を描いた、・・・って、ただ、それだけの事ではありますけども。
創作なんて自分が本当に好きなものじゃないと、どれだけ頑張って描いても伝わるものじゃない
でしょうし。
だったら、僕は、この子達を描いとくしかないだろう、と。

 ・・・そんな感じです。
 
『ポメ。』と言えば電子書籍がすでに(7)巻まで出版されてますが、
『ぱたぱたジミー』の方は構想から執筆までここまで空白期間があったのは、何故でしょう?
 「ポメ」と「ジミー」では、その僕自身の思い入れが少し違うから、
・・・っていうのはありますかね。
僕が高校一年になったばかりの頃「ポメ」が突然他界して、傷心してた僕をジミーがずっと
なぐさめてくれてたなぁ・・・って、あの子等の事を回想するとそんな想いはあるんですよ。
だから、その「ジミー」が他界した時には、ある意味「ポメ」の時より傷が深かったのかも
知れません。

 その上で後に「ポメ」を漫画で描いてみたら、変に悲しいものにならずに明るものが描けた。
でも、「ジミー」の漫画を描こうとしたら、なかなか「ポメ」の時みたいには描けなかった。
「ポメ」と同じ様に、明るく元気だった「ジミー」の姿を僕は描きたかったし、
それを皆に見てもらいたかったのに、どうしてもそれが上手くできなかったんです。
  
センチメンタルになって、筆が鈍った?
 メソメソしてたんでしょうね、要するに。(苦笑)
そんな状態じゃ、良いものは描けない・・・と言うか、僕の知ってるジミーは降臨してくれない
だろうと思ったので、もう僕の胸の内が落ち着くまでジミーの話はお蔵入りにしとこうしとこうか、
と。
それで、結果的に長く構想から寝かせてた作品、って事になってしまいました。
 
それを今描いたのは、期が熟したという事だったのですか?
 熟してたかどうかは分かりませんけどね。
ただ、これを描く前に、個人的にいろんな事件がありまして、またいろいろ考える事もありまして。
ちょうど【『赤プリン』第9巻】を製作してた時に祖母が他界しまして、通夜だ葬儀だ納骨だと
いろいろバタバタしてまして。
それがようやく一段落したかなって頃に、今度は東北大震災がありました。
僕自身は広島にいましたので被災はなかったんですけど、知人が福島にいたので
ずっとそれが気になってまして。
これは、漫画描いてる場合じゃないよ、って気分にもなってたんです。

 でも僕が仕事止めてても何にもならないので、とにかく手だけは動かしていよう、と。
それで【『赤プリン』第9巻】は何とか完成させたんですが、大きな震災のあった時に漫画を出版する
のは気が引けまして、一時出版は見合わせてたんです。

 いつもなら原稿が完成したら電子書籍化して出展申請してWebサイトの更新してといろいろ
バタバタ忙しいのに、出版延期でやる事がなくなってしまって。
変に心配事がある時って、カッチリした仕事がないと落ち着かないんですよね、どうも。
それで、すぐに次の作品執筆に取り掛かりたいと思ったんですが、その時の精神状態では
『おひざのぽぽちゃん』とか『赤プリン』とかのほんわか話はちょっと精神的に描くのがしんどかった
ので・・・。
で、他に何かないかな?って考えたら、浮かんで来たのがジミーの事だったんです。
  
それが、先ほどの「降臨」話とつながる訳ですね?
ピンチの時に、かつての飼い主の元に降臨してくれた、と。
 ん〜・・・。
まぁ、満を持して降臨したんじゃなくて、頼りなさそう見えたんで、心配して様子を見にやって来た
・・・って感じの方が正しいかも知れませんけどね。
「ジミー」って、そういう子でしたから。
普段は目茶苦茶マイペースなのに、困ってる奴を見ると、ヘルプにやって来ないと気が済まない、
みたいな。

 そんな「ジミー」の顔がフッと見えたんで、「あぁ、じゃぁ、ジミーの話を描こうか!」ってなったという。
・・・そんな感じでしょうかね。 
 
『ぱたぱたジミー』の作風は、『ポメ。』よりも『おひざのぽぽちゃん』に近い印象ですね?
 初めは『ポメ。』みたいにギャグっぽい感じで描きたいと思ってました。
セキセイインコはすごく愛嬌があって遊び好き、利口で、要はイタズラ好きなんですけど、
「ジミー」もいろんなイタズラをやってくれてましたから、その様子はギャグ漫画として楽しく描ける
と思ってたんです。

 でも、昨今は動物物語って、ウカツなものを描くと良くない影響をもたらす傾向があると思うので。
玩具や携帯ストラップ、デジタルゲームのキャラみたいにブームになってるし、可愛いからその時は
飛びつくけど、飽きたら簡単にポイ捨てする・・・っていうんじゃ困ります。
無機物ならそれで良くても、生物までそんな感じで接するような感性に育ってもらうと困るんです。
それじゃ、現実の動物達にとっては、迷惑千万な事態になってしまいますから。

 僕は動物の漫画や絵本を相当数描いてますけど、それは動物人気に便乗して注目されようとか
利益を上げようとか、そんな気分満々でやってる訳じゃないんですよね。
その辺の描き手の想いは言わなくても本から読みとって下さる読者の方もいらっしゃいますが、
くみとって下さる方ばかりじゃありませんし。
だから、生物の事を描く上で、前置きとして言うべき事は言っておかないと。

 「この子達は、可愛いですよ。でも、この子達は生物だという事は、忘れないでくださいね。
育ての親がちゃんと責任を持って親をやっていないと、この子達は死んじゃうかも知れませんよ。」
・・・と。
 
それは、ペットを飼う時の絶対条件ですね。
飼い主の責任意識が弱いと、ペットは不幸になってしまいますものね。
 当たり前と言えば当たり前の事で、そんな事あえて言わなくても皆分かってるよと思いたいんです
けどね。
現実に広く世間を見渡すと、とてもそんなレベルになれてるとは思えない。
だから、本当は底抜けに明るい姿だけを抜き出して漫画に描きたいんだけど、それができない。
・・・そんなもどかしさはありますよね。

 傷ついて血を流してる幼児の姿なんて、誰が描きたいもんですか!・・・って。
 
「傷」と言えば、「ジミー」の顔に傷跡があるというのは、実際にそうだったのですか?
 事実、そのままです。
肉がボコボコ盛り上がっててね、ずっと残ってましたよ。
「ジミー」よりも、他の二羽ヒナの方が傷跡は大きく残ってましたね。
一羽は瞼が腫れあがった感じで目が半分ふさがってて、もう一羽は大きなてっぺんハゲになって
ました。
でも、飼い主としては、可愛がってる子供の傷跡なんて別にどうって事ないんですよね。
ずっと一緒に暮らしてれば、傷がある事すら忘れちゃってますしね。

今回「ジミー」達の本を描く事になった時に、
「ああ、そう言えば、顔とかに傷跡があったっけ?」って、ようやく思い出した位でしたしね。
ペットと飼い主〜ですか、まぁ、親と子の関係と言った方がしっくり来ますけど。
それは、そんなものなんでしょうね。

 「親」としては「傷跡なんて」って気持ちがあるから削除しても構わない設定ではあるんですけど、
第三者の方にもその辺の気分は伝えておいた方が良いかなと思って、その設定は残したんです。
「親」としては子供は可愛くきれいな漫画キャラに描いておきたかったけど、事実を事実として
嘘つかずに読者さんに伝えるために、あえて描いた「傷」だった、と。
 ・・・そういう事なんです。
  
今回は、第(1)巻としてヒナの話が描かれていますね。
第(1)巻が出版されたばかりで少々気は早いのですが、今後描かれるであろう
『ぱたぱたジミー』の続編は、どういった展開となるのでしょう?
  ヒナの姿をしてる期間は2週間かそこらで短いものですしね、(2)巻の頃には、もう成鳥の姿
になってるんじゃないでしょうか?
今現在まだ具体的には物語も何もできてないので、具体的にどうなるかはまだ分かりませんけど。

 ただ、セキセイインコを飼育された方で印象に残る体験って言うと、ヒナへのさし餌が一つと、
後は成鳥時代の愛嬌ある遊び姿ですよね。
人間の声真似して喋ってる所とか、懐いて手に乗って来る姿とか、ブランコや鈴で遊んでる所とか、
いろんな場面があると思います。
そういう所は、小鳥飼いされてなくても見てるだけで楽しいと思われる方は多いですよね。
(2)巻以降は、そういう場面も描いて行きたいと思ってます。
 ・・・元々、そういうインコならではの絵面が描きたいと思ってましたしね。

第(1)巻では保護したヒナにはまだ名前もついてないって所で話が終わってます。
「ジミー」と一緒にいる子は、後に付けられる名前がまだ紹介されてません。
里親「蒼空君」の家にはまだ他のインコがいるし、他にも「ポメ」が登場する予定です。
  
『ポメ。』の中では、飼い主は「ご主人たん」と呼ばれてましたよね。このキャラクターと
「蒼空君」は同一人物になるのでしょうか?
 別キャラクターって事にしています。
初めは同じ「ご主人たん」で登場させようかと思ってましたけど、あれは僕(作者)の分身みたいな所が
大きいもんですから、顔は出したくないキャラクターなんですよね。
『ポメ。』は作風上ノッペラボーなキャラでもハマるんですが、『ぱたぱたジミー』はストーリー物になって
ますから、それじゃ違和感があるんです。
じゃあ、『ぱたぱたジミー』の中だけ「ご主人たん」の顔を出しちゃうか?ってなると、やっぱり自分の顔
は出したくないなぁって気分があるし。
それに、真面目な物語で「ご主人たん」なんてユルい呼び方もどうだろう?って所もありましたし。

それで全然別人にしようかと思って、いっそ少女に代えようかとも考えたんですけど。
でも、少年と少女では思考も感性もまるで違って来ますし、それを入れ替えてしまうと物語テーマすら
根本的に変わってしまいそうだったので、そこまで改変するのは止めました。
それで、あくまでベース(基本)は「ご主人たん」のままで、もっとやんわりしたキャラクターの少年
新たに登場してもらう事にしたんです。
「蒼空君」って名前は、『赤プリン』の「ソゥちゃん」モデルの子の名前を拝借しました。
結果的にですけど、字面が小鳥に上手くかかってるので、適役だったかなと思ってますけどね。
  
「幼稚園の先生」は、まつはらさんの叔母様がモデルになってるとか?
 ええ。僕の幼児期に住んでた家の隣が幼稚園で、そこの先生をしてた人です。
僕の幼児期は両親が共働きで、日中はその叔母夫婦が育ての親してた事もあって、物心つくまで
僕はその人を実の母親だと思ってたそうです。
セキセイインコと同じで物真似喋りしかできない頃ですね、その叔母夫婦家の従姉妹が言ってるの
を真似て「おぉかぁ〜ちゃん、おぉろぉ〜ちゃん」って言ってたみたいで。
で、夜に実家に帰ると、実の両親には「かぁ〜ちゃん、とぉ〜ちゃん」って、「お」が付いてない。(笑)

 そんないろんな思い出のある人をモデルにしてるので、この「幼稚園の先生」というキャラクターも
作中では描いてない所でいろんな思い入れがありますね。
そういう人の手で「ジミー」達は救われて、生きて来れたんだよ、って想いは絵に込めたつもりです。
  
・・・・そろそろお時間となって参りました。
それでは、最後に、読者の皆様に一言ありましたら、お願いします。
 ここまで目を通された方、ありがとうございます。
『ぱたぱたジミー』は、まだ生まれたばかりのヒナみたいなものだと思いますが、
興味を持たれた方、ぜひご購読いただけると嬉しいです。
今後皆様と共にいろんな想いがぱたぱたと空に羽ばたいて行ってくれると、幸いです。

 どうぞ、よろしくお願い致します。
 
本日はありがとうございました。

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